逆流性食道炎とは
「胃食道逆流症」(GERD(ガード):Gastro Esophageal Reflux Disease)とも呼ばれ胃酸が食道へ逆流することにより胸やけもたれやなどの不快感を覚える病気です。 胃内容物によって不快感を起こした状態を言い、あくまで患者さん側が規定する疾患であるということがポイントです。実際、胃もたれや不快感等の症状は患者さんの方が診察する医師以上により重く感じている可能性があります。
GERDと呼吸器疾患は関連している
長引く咳の原因として欧米ではGERDが約1/3を占めると言われており、日本でも最近ではGERDによる長引く咳の患者さんが増えているという報告があります。また、咳が出ることでGERDが悪化し、さらに咳が悪化するという悪循環(Cough-Reflux Self Perpetuating Positive Feedback Cycle)」という概念も提唱されています。重症喘息においては治療すべき併存症の1つと位置付けられています。
胃カメラ正常の胃酸逆流症:NERD(ナード)とは
胃カメラを行った際に、逆流性食道炎と診断を受けた方もいらっしゃると思います。それでは胃カメラ所見で異常が見られなければ胃食道逆流症ではないと診断してもよいのでしょうか?実は、胃カメラでは炎症が見られないが胸焼けやもたれなどの症状を呈する疾患を非びらん性胃食道逆流症(NERD:ナード)といいます。GERDは胃酸逆流による症状が主体ですが、NERDは食道の知覚過敏が原因となっていると言われています。そのため、GERDとNERDでは病気の特徴が少し異なります。GERDは男性、高齢、肥満、喫煙者が多く、治療薬(PPI)が奏功しやすいという特徴があり、NERDは女性、若年、痩せ型に多く、治療薬に反応しにくいという特徴があります。胸焼け・もたれなどの症状がある方を対象とすると、GERDは4割、NERDは6割とされ、実はNERDの方が多いことが分かっています。
GERDの治療
生活習慣の修正
GERDと生活習慣には関連があり、生活習慣の修正を行うことでGERDの改善が得られます。肥満者に対する減量、喫煙者に対する禁煙、遅い夕食の回避や、就寝時の頭位挙上などです。また食事内容については、胃酸分泌を促進させるもの(脂肪食、アルコール、カフェインなど)を避けることが重要です。
胃酸分泌抑制薬
胃酸分泌抑制薬を服用します。よく使用されるものはH2ブロッカー(H2RA)、プロトンポンプインヒビター(PPI)、カリウム競合型アシッドブロッカー(P-CAB)があります。過去の検討ではGERDに対してH2RAよりもPPIの方が効果が高く、PPI治療抵抗性の場合でもP-CAB治療はより高い効果を得たと報告があります。
◆ H2RA 代表的な薬
・ファモチジン(ガスター)
◆ PPI 代表的な薬
・オメプラゾール、ランソプラゾール、エメプラゾール(ネキシウム)など
◆ P-CAB 代表的な薬
・ボノプラザン(タケキャブ)